【高血圧(脳溢血)と熱寒食養生】


【養生の基本】

標準より高めの血圧であっても、ごく普通に生活している人もいますが、一般には、目が充血したり、肩が凝ったり、頭痛がしたりといろいろ症状が出てくるものです。
この状態は、血管壁に対する内圧が高くなっていることを意味しており、よく引き合いに出されますが、水道の蛇口にゴムホースをつなぎ出口を細くして水をおもいっきり出している状態、と思えばよいでしょう。
このとき、ゴムホースが古くて干からびた状態だったりすると、ホースは破れ水は外へ飛び出します。このようなことが人間の頭で起きると、いわゆる脳溢血ということになります。

病気の起こりやすい時期は、急激な温度変化、それも暖かい状態から寒い状態へと変化するころです。
そういう意味で、どちらかというと外気温の変化が大きい北日本の方が、このような状況になりやすいという現実もあります。
同じ理由から、真冬の安定した寒い季節よりも、春先の頃、即ち三寒四温の頃の方が危険だということになります。

例えば、家の中でも暖かい部屋から比較的温まりにくいトイレやお風呂場への移動は気を付けるべきです。
もっとも、最近では、建物の気密性がかなり向上していると同時に、断熱材も良くなってきており、家の中での温度変化はだいぶ少なくなってきてはいます。


【昔ながらの食養生】

高血圧の人というのは、朝は早く起きることが出来ますし、行動力も抜群で、エネルギッシュに働けるという点、どちらかと言えば熱型のタイプが多いはずです。
即ち、寒タイプの食事を意識してとることにより、健康維持の一助とすることが出来るはずです。

様々な血圧に良いといわれているものがありますが、代表的な物を上げてみましょう。
わかめ、柿葉、きゅうり、なす、菊花、そば、昆布。これらはいずれも寒性のものです。
柿そのものも、体を冷やすものとしてよく知られていますし、柿渋は中風の薬として現代に伝わっています。
また、柿の葉はビタミンCを多く含み、血管を丈夫にすることでも有名です。椎茸、サツマイモは平性、酢は温性です。
これらのものを参考にして、 熱タイプの人は寒の物を、寒タイプの人は熱の物 を、普段の食事の中で意識してとるように心がけるとよいでしょう。

体質 とった方がよい食品 避けたい食品
熱性タイプ 柿、梨、菊花、西瓜、なす、パセリ、
大根、昆布、ワカメ
うなぎ、アルコール類
寒性タイプ 紫蘇、りんご、椎茸、人参、酢 塩分、玄米、たばこ、蟹、アロエ


気を付けて頂きたいのは、何でもそうですがあまり 極端にならないように して頂きたいということです。
例えば昆布、朝日新聞の健康欄にも載っていましたが、とりすぎると甲状腺の機能が低下したり、むくみが出たりしますので注意してください。


【血圧と郷土料理】

さて、脳卒中や高血圧の人が多いところといえば、東北地方があげられます。
特に酒処秋田では、沢庵などの漬け物だけでお酒を飲む、いわゆる“から酒”をする人が多いようで、脳卒中などの疾患を増やす要因の一つになっていると思います。
ところで、同じ酒豪の地土佐では、大酒は飲むものの、高血圧や脳卒中はそれほど多くはないのだそうです。
年間の平均気温が違うということもありますが、土佐の郷土料理には、酒毒を消すものが多く見られ、酒豪の国の生活の知恵がいかされているように思えます。
その中で、最も代表的な物は、生椎茸なのだそうです。それをどうするかというと、味付けなどはなにもせず、そのまま金網で焼いて食べるのだそうです。
当然、味気ないものなので、慣れないとなかなか口に合わないようです。

しかし、低血圧の人が食べ過ぎると、顔色が青白くなり、貧血を起こすといわれていますので、なかなかの効き目ではないかと予想されます。
また、魚の姿寿司(ハタハタの寿司のようなもの)のようにして食べるものには、酢をたっぷり使い、たたきには、生の玉葱を薄く刻んだものを、煮物などには、ニンニクの葉の部分を入れたりもするのだそうです。
このような、ちょっとした違いも健康維持のための大きな力になっているのだと思います。
また、玉葱の場合には、その皮を煎じて飲むのも良いとされています。
日本というところは、北と南で随分気候が違い、その土地に育まれた人々の体質と食文化があります。
“その土地の物を食べなさい”とよく言われますが、その地方での生活に注目してみると、納得させられる一例だと思います。
こうしてみると、郷土料理というものは、時に、その土地ならではの健康の秘訣が隠されているものなのかも知れませんね。

高血圧に良い食品

食品名 四季 熱寒 食 効
わかめ 気を良く下し、長く食すると痩せる。
柿葉 VCがレモンの20倍、お茶として用いる。
きゅうり 利尿、浄血 アスコルビナーゼを含む
なす 血圧降下、歯槽膿漏
椎茸 抗ガン作用、血中コレステロールの低下
さつまいも 動脈硬化、虚弱体質の改善
菊花 血圧降下、充血、眼精疲労
蕎麦 血管強化作用
昆布 血管の若返り、動脈硬化の防止
疲労物質の燃焼、高血圧の予防

【西洋薬と熱寒】

医薬品は、その起源が植物のものが少なくありません。
前回『・・・新薬であっても、そのもととなっている植物をたどってみることによって、熱寒的なとらえ方が出来るのではないか・・・』ということから、ブロメライン、リゾチームのお話をしました。

降圧剤なども、その起源となった植物の性質によっては、もしかしたら、“熱寒的な見かたが出来るのではないか”と考え、調べてみることにしました。
薬局・薬店の店頭で販売できる高血圧の薬の主成分に、ラウオルフィアアルカロイドとして有名なレセルピンがあります。
神経末梢に貯蔵されているノルエピネフリンを枯渇させ、交感神経を抑制するレセルピンは、副作用が多いことから、降圧剤としての第一選択には向きませんが、どうしてもβ−遮断剤が使用できない場合など、第二次選択的に使用されることが多い薬であることは、良く御存知のとおりです。

ところでこのレセルピン、キョウチクトウ科の植物であるインド蛇木の根から作られるわけですが、実はこの部分、熱寒でいうと"寒"ということになります。
高血圧症の方が、基本的に熱タイプであるという前提のもとであれば、これは非常に興味深いことだと思います。


この文章は薬局新聞に連載された原稿をホームページ用に再編集したものです。

大和久式熱寒食事検査法は日本国において特許を賜りました。


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